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サービス利用に至るきっかけ

I様　女性　82歳　要介護1 一人暮らしをしていたI様。どちらかと言えば内向的で、楽しみは近所に住む孫が時々遊びに来てくれることです。物忘れ等があるため介護保険を申請し、訪問介護を利用して見守り生活をしていました。ある日、近所の方から次の町内会の組長の順番だと告げられたことが精神的な負担となったようで、「みんなが悪口を言っている」「毎日毎日家の外で騒ぎ立てている」と現実にはないことを話すようになりました。医師の診察結果は統合失調症とのこと。もともと賃貸の家であったこともあり、長男・次男は施設入所を提案しました。本人は周りの勧められるままに施設入所を了承しました。

本人・ご家族の希望

家族はI様が心穏やかに生活できることを望んでおり、環境が変わり、見守りがある中で不安が解消されることで、統合失調症の症状を和らげることができればと願っていました。

施設の提案

受け入れにあたり、妄想や幻聴等の症状は見られるため、見守りのある中で何かを強制されるようなことなく生活できるような環境を整えると共に、閉じこもりによる下肢筋力低下が見られるため、施設内の移動にと歩行器のレンタルを提案しました。

施設に入所して

施設に来たばかりの頃、I様は新しい環境に不安を感じている様子でした。部屋で過ごしているときには幻聴があるようで「やめて！」といった声が部屋から聞こえてくることが度々ありました。 そこで職員はカンファレンスを行いました。そこで ・主治医に相談して、薬の調整をお願いする ・声が聞こえたときは部屋に伺って声をかける ・本人の訴えを否定しない ・閉じこもりを避けできるだけ体を動かしてもらう という3つのことを決めました。 それからは声が聞こえると職員が部屋に伺い「何か困ったことがあったらいつでも声をかけてくださいね。私たちが力になりますよ。」と笑顔で優しく声をかけることを続けました。また、朝のラジオ体操、レクリエーションのイベントなど、「一緒に体を動かしませんか？」と声をかけ、職員や他の入居者と関わる機会を増やしていきました。

I様の変化

I様の声は入所後は徐々に増え、声も大きくなっていましたが、部屋に訪れ声をかけると「ううん、なんでもないのよ、ありがとう」と返すだけの状態がしばらく続きました。しかし、次第に職員のことが分かるようになってくると声掛けに対し「外で大きな声で言われるの」と困りごとを相談してくれるようになりました。職員は「それは大変でしたね。今は大丈夫ですか？私たちも気を付けておきますね。困ったらすぐに来るのでこのボタンで呼んでくださいね。」と伝え、I様の気持ちにより沿い続けました。声がしない時も時々居室を訪問し、「調子はどうですか？」「一緒に外の空気を吸いに行きませんか？」と声かけ、続け安心できる環境であると感じられるように声をかけ続けました。１か月後のカンファレンスでは、職員からは少しずつI様に笑顔が見られるようになってきたとの報告があり、状態が上向いていると感じられました。それからもI様への対応を続け、３か月ほど経過すると部屋から声が聞こえてくることがほとんどなくなり、笑顔も随分みられるようになりました。体操の時間になると自分から部屋から出てきて参加するようにもなり、安心して生活できているように感じられました。 I様が入居され３年ほど経過しました。季節によっては時々部屋から声が聞こえることはありますが、職員や他の入居者と笑顔で話す様子が見られ、今も元気で過ごされています。